【読書記録】「ルワンダでタイ料理屋をひらく」を読んで世界の広さに驚く

 

ルワンダでタイ料理屋をひらく

ルワンダでタイ料理屋をひらく

  • 作者:唐渡千紗
  • 発売日: 2021/04/01
  • メディア: 単行本
 

 

 

「これ、ぜひ読んでみてください!」

 

そう言って職場の後輩くんから教えてもらったのが、この本だった。

 

題して「ルワンダでタイ料理屋をひらく」。

 

ルワンダ?知らない。

すぐにAmazonで本の詳細を調べて、その場のノリで購入ボタンを押した。

こういう時のスピード感は大事だと思っているので、帰宅してすぐに読み始めて3日目には読了した。

読み終えた時の目の前の世界は、読了する前の世界とは違って見えた。

語彙力が無いのでうまく表現できないけれど、あえて絞り出して言うのであれば「世界って広いんだなぁ…」ということだ。

最近の私といえば、年少になるママっ子の娘を抱えつつ、異動したばかりの部署で仕事に追われ、家事も疎かに夫からやや冷たい視線を送られている、そんな生活だ。

目の前のことでいっぱいいっぱい。

現状を打破するために家事や仕事の時短術をググってみては試し、最近の冷凍食品は美味しいな〜とスーパーで新商品を買い漁り、とにかく見えている世界をいかに良くするかしか考えていなかった。

 

そこにいきなり飛び込んできたのが「ルワンダ」。

どうやらルワンダというのは、国名らしい。

Wikipediaによると

ルワンダは東アフリカに位置する内陸国で、国土は緑の山岳地帯に覆われています。

と書いてある。私の地理力は3歳児並みなので(アフリカ…アフリカねぇ…)と世界地図を頭に思い浮かべるもアフリカがそもそもどこなのやら。

対して相棒のiPhoneは優秀で、ルワンダと打つと国旗を出してくれる。

 

🇷🇼

 

ブログに表示されるかわからないが、水色×黄色×緑の爽やかな色をした国旗だ。それぞれの色は平和、繁栄への希望、国民を表しているらしい。

 

この本は、日本からは遠いアフリカのルワンダという国で、5歳の子を持つシングルマザーの女性が「えいや!」と移住してタイ料理屋を開いた軌跡が記されている。

日本のシングルマザーという立場だけでも大変なのに、さらに異国ルワンダに移住し、さらのさらにタイ料理屋を開くというどこから突っ込めば良いんですか…?という内容である。

 

大変だっただろう。

軽快なテンポで書かれた文章はまるでそんな苦労も笑い話!と言わんばかりで、次々と起こる"日本ではあり得ないトラブル"にこちらも思わずつられて「そんなことある!?」「こんなの無理でしょ!」と突っ込みながら読み進めてしまうが、『軽快なテンポ』と表現するには重すぎる事件や悩みもあっただろう。

子育てだって、である。

文章中では息子のミナトくんについて

 

毎日の日記は、ほとんどミナトへの懺悔だった。SNSやブログでは仕事と育児に奮闘! と前向きな発信をしていても、現実はそれ

 

と書いてあり、思わず目頭が熱くなる。

何事も書いてあることだけが、目前にあるものだけが世界ではないのだ。

懺悔してしまうほどあっちにこっちに頑張ってるなんて本当にすごいことだと思う。

だって色々な顔の分人を持つ人が、どの分人も完璧に生きるなんて不可能だもの。(そう分かっていても、現実は懺悔してしまうものだけど…)

同じワーキングマザーとして、思わず感情移入してしまった。

 

また、驚いたのはルワンダに住む人たちが持つ暗い過去と明るい生き様である。

私はこの本を読むまでルワンダ虐殺について知らなかった。何十万人という人々が殺され、それは国民の10〜20%もの数だったらしい。

著者の唐渡さんのお店で働くスタッフたちの口から語られる1994年に起きたこの大虐殺の端々を、私は文章でさえ直視することができなかった。

想像することを頭が拒んだ。

そんな悲惨な過去を持つ彼らであるのに、また、それによって困難さを極めた人生であったのに、彼らの言葉は非常に強いものばかりだ。

 

ノープロブレム!ケニアの言葉でハクナマタタ!

 

「アイ・ソー・メニー・ピーポー、グッド。だから、自分もグッド・マンになりたいと思ってやってきたんだ」

 

「ザット・ハプンズ・イン・ライフ(そういうことも、人生にはあります)」

 

「アイ・アム・ラッキー。イッツ・ミラクル」

 

そう言わざるを得ない環境だったのかもしれない。だって残された人の人生は今日も明日も続いていくから。

泣いていてもご飯もお金も出てこない。

動くしか道がない。

 

この本を読んで、自分の世界の小ささに改めて驚いた。著者の唐渡さんの考えや生き方もだし、ルワンダの人たちの生活や考えなど、今の私には想像もつかないことだらけで言葉にならない。

でも、そういう世界があるんだと知っただけでもよかったと思う。

改めて自分の人生について考えるきっかけになった。

 

私が持っていて、彼らが持っていないもの。

彼らが持っていて、私が持っていないもの。

 

日々のたったの数十分時短をして、人生の何が変わるのか?

その日がうまくいかないことだらけだったからといって、自分を必要以上に追い込んでいないか?

 

彼らの「何をそんなに生き急いでるの?」という態度に、私も思わず立ち止まって「何でかなぁ…」と空を見上げる気分になった。答えはもちろん見つからない。

 

 

 

 

著者の唐渡さんがこの本の最後に、自分「らしさ」について触れている。

 

「らしさ」は、アウトプットからしか見えてこない

 

結果というアウトプットは、日々の努力というインプットが溢れることでしか生まれない。圧倒的な量を、溢れるまでインプットし続けるしかないのだ。

 

 

うーん、深い。

結婚してからというもの、社会人であるべき姿、妻である姿、子どもを産んでからは母という姿も加わり、「自分って何が好きだったんだっけ?」と思うことがある。

たまに訪れるひとり時間に何をして良いのかが分からず、とりあえず部屋の掃除でもするか…と動き出してひとり時間がなくなる虚しさを感じていた。

夫は結婚後も変わらず趣味を開拓していて、羨ましい気持ちと憎らしい気持ちとに翻弄されることもあった。

 

私ってなんだろう。

 

まるで哲学だ。すぐに答えが見つかればいいけど、悩んでいても生活は続くし寝て起きれば朝が来る。

難しいことはわからないが私は私なりに頑張るしかなさそうだ。

自分なりのグッドで楽しい生活ができるよう、無駄な背伸びをすることなく今できることをやっていこうと改めて心に誓った。

そしてあわよくば、グッド・ウーマンになれるように笑顔を絶やさずに日々を過ごしたい。